読書記録『ホテルローヤル』『不幸になりたがる人たちー自虐指向と破滅願望』

 この1年半ほど、読書量が著しく落ちていて、活字離れが酷かった。頭の中で固有名詞が出てこなくなったり、昨日何をしたかすぐ忘れたりするようになった。読書量が減って頭の体操をしなくなったのが一つの原因かなと思ったりもする。年末年始の休みに入ったので、引き籠って本を読むことにした。

 

ホテルローヤル

ホテルローヤル

 

 さて、『ホテルローヤル』はいい小説であった。舞台は北国にある場末のラブホテル。文章から寂寥感が漂ってきて、読んでいてしんみりした。

 章立てになっていてそれぞれの登場人物が全体で錯綜する形式。時系列はバラバラ。第一章では既にローヤルが廃業していて、カップルが廃墟の中に侵入してヌード写真の撮影をする。いい趣味とは言えないが、何となく分からないでもない。観光地に近い山奥の県道を車で走っていると、廃墟のホテルが林立していることがある。赤や緑のレトロな看板が道端の草むらから顔を出していて、小道の奥へ奥へと手招きしている。昭和の遺物である。ああいうのを見ると、かつてどんな男女が出入りしていたのか、いちいち想像を巡らせてしまう。

 装丁画もいい。これは誰だろう。作中の人物だろうか。なんだか悲しい感じ。

不幸になりたがる人たち―自虐指向と破滅願望 (文春新書)

不幸になりたがる人たち―自虐指向と破滅願望 (文春新書)

 

 『不幸になりたがる人たちー自虐指向と破滅願望』は良くなかった。精神科医の著者が、常人には理解できない行動をとる人たちを、科学的に分析をするものかと思いきや、好き勝手自分の意見を述べているだけで、しかも分析対象がニュースや小説の引用ばかりで、途中でうんざりしてしまった。